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書評『変革を生む研修のデザイン―仕事を教える人への活動理論』

人材育成 書評 思索

 

変革を生む研修のデザイン―仕事を教える人への活動理論

変革を生む研修のデザイン―仕事を教える人への活動理論

 

 

原著は『Training for Change』

 

Training for Change: New Approach to Instruction and Learning in Working Life

Training for Change: New Approach to Instruction and Learning in Working Life

 

 

今の所(2015年11月)、絶賛レビューが存在しないので書く。

簡単な紹介については下記の記事を参照

NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 「変革を生む研修のデザイン」と「人間科学のための混合研究法」を読んだ!

せきねまさひろぐ: 「変革を生む研修のデザイン」

 

研修屋には耳の痛い話

本書の冒頭でも触れられているけど、本書では、何の理論化(モデリング)や目標指向の指導を経ることなく、「経験」を経れば、学習が起こる、という一部の「経験学習」や「アクションラーニング」の論者の考え方に意義を唱える。

また、ディスカッションや演習、ダイアローグといった、教授手法の外面的特徴にフォーカスした研修が、生徒の内面的学習プロセスを無視しては全く意味がないことも主張している。

 

個人的にはインタラクションや演習は重視するし、学習効果は高いと思う。ただ、研修業界では、学習効果ではなく、受講者を飽きさせない、とか、満足度を上げることを理由にさしたる効果もない楽しい演習を入れる場合も多々あるので、これは重要な指摘と思う。

 

学校教育で「アクティブラーニング」が実施されようとしている今、広く読まれ、考えられなければならないんじゃないかと思う。

 

インストラクショナルデザインとの関係

一般的な研修設計手法として知られているのは、所謂インストラクショナルデザイン(ID)。開発プロセスとしては、「ADDIEモデル」になるのかな。

ADDIE Model - Wikipedia, the free encyclopedia

  

通常、学習目標となる行動を特定して、スキル分析をして、「〜ができる」って形で学習項目を挙げていく。

 

個人的にはとても優れた手法だと思うし、実践的。

特に「カスタマーサービスがマニュアル通りに実施する」、みたいな単純なスキルのトレーニングに関してはある程度モデル通りに設計していけば研修ができる。

 

教材設計マニュアル―独学を支援するために

教材設計マニュアル―独学を支援するために

 

 

 

はじめてのインストラクショナルデザイン

はじめてのインストラクショナルデザイン

  • 作者: ウォルターディック,ジェームス・O.ケアリー,ルーケアリー,Walter Dick,James O. Carey,Lou Carey,角行之
  • 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
  • 発売日: 2004/08
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 13回
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ただ、もう少し複雑で高度なスキルとなると、色々と工夫が必要で、そこは当該専門分野の知識のほか、講師経験や研修開発経験を生かして研修に盛り込むしかない。

 

というのは、IDそのものは特定の学習観とか教授手法からは独立した、スキルの外形的分析手法の定義とプロセス定義だけを行っているものだから。

 

エンゲルスロームの本書は、このIDで空っぽだったコンテンツ開発の手法を提示していると言っていいと思う。

 

その手法はとても実践的で有用。自分がいろんな失敗を経て、こうじゃないか、と考え、ある程度うまくいっている持論がより洗練された形で説明されている、という印象。

 

本書のビジョン

エンゲルスロームの教授理論の素晴らしいところはそのビジョン。

 

人が実践コミュニティの中で自ら学び、既存の自分の認知的枠組みを問い直す「拡張的学習」を行うことのできる能力を育てることを視野に入れている。

教えられただけでなく、それを問い直し、乗り越えることを見据えている。

 

教え子が教えた内容を乗り越え、教師を超えていく、というのは、多くの教育者の目標だろう。

 

本書はそれを達成することを手助けしてくれる。

 

指導の黄金律

本書の終章にて、提示された指導の黄金律。それぞれ、最初の一行だけを抜粋。

  1. カバーする主題事項は少なくし、よりよく、徹底的に教えること。
  2. 脱文脈化された「出来合いの」事実や技能を教えることに満足しないこと。
  3. 生徒の中に実質的な動機付け(主題事項の使用価値への興味)を喚起すること。
  4. 主題事項の本質的な原理を明らかにする方向づけのベース(Orientation basis)を作り出すこと。
  5. 探究的学習のサイクル(動機付け、方向づけ、内化、外化、批評、統制というステップを含む)を目指すこと。
  6. 充分な配慮をもって教授計画を立てること。
  7. 生徒に多くを求めると同時に、生徒を尊重すること。

 

その他、引用ツイート