研修フォローアップに対する一考察

例によって、整理しないで、たらたら書く。

 

研修フォローアップの大切さ

下記のようなツイートをした。

 

きっかけは中原先生のところのフィードバック研究会で、フォローアップが少し議論になったこと。

 

論文ではエクゼクティブコーチングと360度フィードバック明確な効果が実証的に確認できた、とする。ただ、コーチングの対象となった項目についてしっかりとしたフォローアップを実行している。

研究会では議論のなかで、この結果は「ある意味、当然だよね。」という議論がでた。フォローアップのなかで、実際の行動を行うようにフォローするのだから、360度フィードバックの結果が改善されるのは、当たり前。

 

コーチングに限らず、研修効果の研究では、やはり、フォローアップの大事さは強調されている。

NAKAHARA-LAB.NET 東京大学 中原淳研究室 - 大人の学びを科学する: 「研修のエンドレス化」と「誰も実行しないアクションプラン」!?:

 

ちと、記憶が定かでなないが、研究では、エクゼクティブコーチングは「効果が出るけど、長続きしない」傾向にあるというのが、言われているそう。

ここでも、きちんとフォローアップをすることが大切、という結論になるのかもしれない。

 

研修フォローアップの目的は何か?

さきの中原先生のブログ記事を引用すると、

「アクションプランを創らせること」が研修ではなく、「アクションプランを実行させるまで寄り添うこと」が研修の仕事という認識が広まっていくのだとしたら、関係各所で、さまざまな見なおしが必要になってくるものと思います。「役割」の見なおしなのか、分担の見なおしなのか、仕事の再定義なのか。それはそれぞれの会社で違うでしょう。

個人的な考えでは、研修の終わりは「自ら研修で学んだことを実行し、それを土台にさらに高度な学習を始めることができる状態をつくる」ことであり、それができてはじめて「学んだ」と言えるのだと思う。

 

つまり、「フォローなくして、行動できない」のであれば、それは「研修の失敗」を意味する。フォローアップに意味があるのは、それが「行動をさせる」のではなく、「フォローなしでできる」状態を作ることに資するものでなくてはならない。

 

具体的には「できるようになっていることの定着」か、「研修で最近接発達領域まで向上した学習内容を、フォローを伴う実践を通じて自力でできるようになる」ことあたりを目的にするのだろう。

 

これはいわゆる行動変容というやつで、真面目な教育担当者や講師・コンサルタントといったプロフェッショナルは当然考え、目指しているものだと思う。

 

個人的には、「フォロー」を実施して、当然の結果として指標が向上することをもってフォローが大切というのは不誠実だと思う。測定上、研修内容の品質よりも強い相関がでるのは当たり前。無理やり「やらせている」のだから。

そのフォローアップが本当に「学習」に意味があるのか、フォローアップ後の成果が「学習」を測定しているのか、ということは注意するべきだと思う。

 

コーチングや、アクションラーニングなどは研修本体とフォローの区別が付かないものもある。その場合でも、「学習」の成果を測定するタイミングは気をつけるべき。

 

「効果の出ない研修」との戦い

研修フォローアップは、教育担当や教育プロフェッショナルにとって、ある意味「救い」になる。「役に立たない」、「福利厚生」とされていた研修に、低リスクで効果があると、説明することができるから。

 

でも、今まで述べてきたように、研修フォローアップによって作り出される成果は「学習」の成果では必ずしもない場合がある。注意しないと自己欺瞞に陥ってしまう。

(もちろん、短期的な成果をあげるための「業務支援」としては正当な成果としてあり得る。でも、それは「教育」ではない。)

 

もちろん、短期的な研修のようなもので本当に「不可逆」な効果を出すことは難しい。

 

でも、自分は新人のときに受けたCTIコーチングワークショップ(12日間)でコミュニケーション能力、特に傾聴力に劇的な改善を得た経験があるし、新人研修のときのビジネスゲームで得た学びは今も残っていて、自分の核になっている。

ワインバーグの著書を読むことで得た問題解決力は読む前と同じレベルにはもうなれない。

 

(人間という複雑系を相手にした時、変化を求めすぎたり、成果を過度に強調することが逆効果になる場合も多々有る。というのは留意すべきだけど。。。)

 

限られた時間の体験が不可逆な変化を起こすことは可能だし、自分自身でも幾つかの成功体験もある。

 

研修やワークショップでなければ身につけられないもの、もしくは、それを通じてだと圧倒的に効率的に習得できるものは確かにある。

 

また、CTIの品質を知っている身としては、グローバル企業でのリーダーシップ開発は、あれと同等のものがあるはず。いつまでも「福利厚生」、「所詮は研修」って感覚で時間と金を無駄にし続けていると、追いついていけない。

 

高度成長期を経て成熟し、成長機会を業務の中で豊富に提供できる事業が減っている多くの企業では、高品質の教育を整備し、武器にしていかなきゃいけないと思う。

 

教育・研修屋の仕事は「効果のでない研修」との戦い。安易な「フォローアップで効果でました。」は敗北以外の何物でもないと思う。