1on1に頼らないこと
1on1 Advent Calendar 2019 - Adventarの14日目です。ちと体調崩してアップ遅くなりました。
1on1の源流
部下との1on1ミーティングの重要性、必要性を強調したアンドリュー・グローブはコンピュータシステムの発達によって、1オン1ミーティングの頻度はずっと減るだろうと言っている。
一対一 の こうした ミーティング は 果たして 必要 なの だろ う か。 絶対 に 必要 なの だ。 それでは 10 人 の 部下 が いる 場合 でも、 5 人 の 部下 の 場合 と 同じ だけの 頻度 で、 こうした 会合 を 持つ 必要 が ある の だろ う か。 その 必要 は ない。なんでも かん でも ミーティング を 持つ 必要 が ある の だろ う か。 そんな 必要 は ない。 という のは、 今日 の 従業員 は 10 年前 に 同じ 立場 に い た 従業員 よりは、 コンピュータ・ネットワーク を通じて、 自分 たち の 企業 の 中 で 一体 何 が 起き て いる かを たいてい の 場合 ずっと よく 承知 し て いる からで ある。
アンドリュー・S・グローブ. HIGH OUTPUT MANAGEMENT (Kindle の位置No.447-452). 日経BP. Kindle 版.

HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイアウトプット マネジメント) 人を育て、成果を最大にするマネジメント
- 作者:アンドリュー・S・グローブ
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2017/01/11
- メディア: 単行本
1on1ミーティングは時間がかかる。ミーティングを有意義なものにしようとして準備なんかをしようとするとなおさらだ。アンドリュー・グローブが本を書いた時代よりはるかにシステムが発展しているはずの現代で1on1がマネジメント手法として注目されているのは、ちょっと注意が必要だと思っている。
1on1の外のマネジメント
ツール
多くの情報は例えばツールなどでタスク管理していれば状況は把握できるし、マネジメントからのメッセージも当然多人数向けのミーティングやwikiなんかの情報共有手段でアップデートされるはず。それらが有用な情報なら多くの人はそれを採取しようとする。もし、それらが受け取られていない場合は別の問題かもしれない。
MBWA(Management By Walking Around) ウロウロすることによるマネジメント
当然、対面でのコミュニケーションは大事だ。ただ、それがフォーマルなミーティングに限定する必要もない。日々ウロウロしながら声をかけながらチームや組織の状態を把握しておく、個人の仕事の状況やどのように困っているかを把握する、雑談する、困っているときに相談されやすい状況を創ることはリアルタイムで問題を把握したり対処したりすることに役立つ。
例えば、ミスが目立ったり、成果物をつくるのが遅いメンバーがいたりしたとき、ちょっと断ってどのように行動しているのかを観察する、などをするのもいいと思う。スキルが足りないメンバーはほとんどの場合、何が足りないのか理解できないので、1on1なんかの場で、自分で課題を説明させるってのは大抵正確ではないし、そこから効果的な解決策なんて生まれないのだ。加えていうと、フィードバックが最も学習効果をあげるのは、その行動を行ったとき、すかさず行うフィードバックだ。(ここらへんは、Scrum使っているときは難しいかも。)
こうした積極的なコミュニケーションは当然、1on1ミーティングで部下から話をきく必要がある情報量を下げる。普段言えないことや潜在的な課題、マネージャーと部下との認識齟齬、訓練などに時間を割くことができる。
MBWA(Management By Walking Around) については自分はこの本で知った。

アート・オブ・プロジェクトマネジメント ―マイクロソフトで培われた実践手法 (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者:Scott Berkun
- 出版社/メーカー: オライリー・ジャパン
- 発売日: 2006/09/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
心理的サポートと内省支援
1on1ミーティングは悩みを聞いたり、内省を促したり、といった機会を提供することもできる。また、お互いの本音をさらして打ち解ける、みたいな効用もあるのかもしれない。一方で、こうしたフォーマルな形式に依存させるのはやはりあまり得策ではなく、普段からオープンなコミュニケーションができる環境をつくる、ということが大切と思う。

ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談」
- 作者:倉貫 義人
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2019/08/31
- メディア: 単行本
内省にしても、プロフェッショナルの仕事は日々省察しながら実践を繰り返すものだ。日々振り返りながらやっていくもの。

- 作者:ドナルド・A. ショーン
- 出版社/メーカー: 鳳書房
- 発売日: 2007/11/15
- メディア: 単行本
マネジメントツールの一つとしての1on1
アンドリュー・グローブの本の中には、優れた知識をもつ部下からマネージャーである著者が学ぶ時間としている例がある。彼によれば、1on1の目的は「相互に教えたり、情報交換する」ことだ。教えるというのは、上司からの教育も、部下からの他者視点からのアドバイス、高スキルを持つ部下からの上司の教育も含むのである。これは1on1の目的が成果を上げるためのマネジメントの一つだと位置づけられている、ということだと思う。
1on1の頻度もタスクの習熟度によって変える。多くの会社で1on1を一律の頻度で実施するということになってはいないだろうか。(習熟度は、例えば二年目までは月一回のような抽象的、形式的なものでない。)
形骸化を避ける
1on1はあくまでマネジメントのツールの一つであり、効果的ではあるが、それはあくまで全体のマネジメントシステムの中で機能するものだ。一方で、何をやっているのか定義が困難な「マネジメント」という仕事の中で、1on1は「やっていること」が分かりやすく、「仕事をした気」になりやすいものであると思う。1on1をやる、という発想ではなく、マネジメントに1on1を活用する、という捉え方の方が形骸化を避けられると思われる。