心理学的ワークショップを組織でやるときに注意すべきこと

コミュニケーショントレーングやリーダーシップ開発、組織開発で、瞑想や深い内省を促すワークを取り入れる場合がある。

 

昔の感受性トレーニングなんかでは、色々事故も起こっているのでそれなりにリスクある。けど、うまく設計すれば、コミュニケーションの取り方や対人関係構築力、指導力なんかが劇的に向上することもあるので、それなりには各企業で取り入れられている。

 

最低限注意すべきこととしてはこんなのがあると思う。

  • ワークへの参加を拒否する権利を認める。
  • グループへシェアするのは自分の判断でシェアすることを強調する。

 

変な自己啓発セミナー紛いのワークショップだと、トラウマみたいのをシェアするのをファシリテータが強制したり、促したりすることがあるけど、そういうのははっきり言ってろくなもんじゃない。ファシリテータは出てきた時は受け止める必要あるけど、そうした上で、そういうセンシティブなコンテンツに過剰な重要性を持たせない方がいいと思う。

 

ビジョンなるもの

経営にも、製品にも、人生にもビジョンは必要。

けど、経営ビジョン作っても、現場ではしらけたり、製品ビジョン作っても、設計段階で意味なくなったり。

 

ビジョンに駆動されていない人や組織がそうなるためにはどうすれば良いのか。例えば、こんなことを考えたらいいと思う。

 

  • とりあえず、作る。部外者が理解できるかよりも、自分たちがテンション上がるかを重視して作る。世の中の良いとされるビジョンは、大抵、その言葉だけでは理解できない。具体的な組織や個人の実践あってはじめて理解される。
  • ビジョンが実現した状態と現在の状態を定義する。現在とどう異なるのかを考える
  • 具体的な行動が、ビジョンに向かっているかをチェックする
  • 必要に応じて修正する。いきなりいいビジョンが描けるって幻想は捨てた方が良い。ただ、テンションは下がる感じに修正してはいけない。
  • 重要でないものを削る。削ってもテンションが下がらないものが結構あるもの。

 

ポエムだが。。。

 

 

 

 

プラユキ・ナラテボーさんの瞑想会行ってきた。

プラユキさんについてはこちら。備忘録として書く

 

blog.goo.ne.jp

 

インド系の勉強や座禅(臨済宗)は、教わったことあったけど、上座部仏教系については独学で、ちゃんとワークショップ行ったことなかった。普通の人たちに実際に役に立つことを教えてくれてる感じでとても良かった。

スケジュール

午前中   仏教の基本的な考えの講義と手動瞑想

午後  歩く瞑想、呼吸の瞑想、手動瞑想、グループで振り返り+質疑応答

 

仏教の基本

 世界は関係性で成り立っている。因(直接条件)と縁(間接条件)でできている。物事の認識の仕方(触⇨受⇨渇愛)で苦しみは起こる。縁は家族や会社、友人関係、読書みたいな環境要因。因はその人のものの見方や心。

 

 苦しみから抜け出すには、受(快・不快・中性)から5力を使って渇愛に至らないようにし、苦しみを滅していく。そして、他の人に楽を与える(抜苦与楽=慈悲)

 

5力

 五力 - Wikipedia

 結構独自の説明があって面白かった。

 基盤となる力

  • 信:信頼力。心にしっかりと向き合うこと。自己信頼、起こってくる感情などへの信頼。オープンハート。
  • 精進:努力。悪を減らし、善を増していく

 3つの中心

  • 念:覚醒力。今ここに生じている心身現象をあるがままに気づく力。自覚する力。マインドフルネス。
  • 定:受容力。大きな心の器、深い懐。
  • 慧:洞察力。心身現象をあるがままに洞察し、理解する力 

 

特に「三昧」とも漢語で言われる「定」について、集中力ってニュアンスで語られることが多いけど、全てを受け入れて動じない心、みたいな説明。

 

瞑想中でも、微細に集中するのではなく、気づくこと、心が乱されてもそれを観察して、OKと受け入れることを強調していた。そうでない瞑想の仕方もあるみたいだけど、自分が最初に習った瞑想もそうやってたからそういうもんだと思ってた。

仏教とは

 ヴェーダ哲学やそれを継承した仏教は、人の世で起こることを全て関係性と認知の問題として見る。これは、システム論的なものの見方。非常に合理的な世界観で何よりも実益がある。自分の中では仏教は宗教というより心身のトレーニング法。武道みたいなものに近い。仏教ではなく、仏道。変に脳科学みたいな怪しい話を持ってくるより、作業仮説として釈迦の理論をちゃんと参照した方が科学的とすら言えるのではないかなあ。

 

だから、適度な瞑想は、本当に人を変容させる。

 

ちなみに、自分の中で、このシステム的な世界観で、非常に効果的なアプローチとしてはクリーンランゲージがある。

 

今現在、

  • 瞑想
  • クリーンアプローチ(クリーンランゲージ/クリーンスペース)
  • エニアグラムのタイプ論

が、自分の中での自己変容のための3種の神器かなあ。その全ての根底にシステム思考がある。もちろん、どれも単なるツールに過ぎないし、イケテナイ瞑想、イケテナイエニアグラムは腐る程あるので、あれなんだけど。。。

 

自由に生きる

自由に生きる

 

 

苦しまなくて、いいんだよ。

苦しまなくて、いいんだよ。

 

 

 

「気づきの瞑想」を生きる―タイで出家した日本人僧の物語

「気づきの瞑想」を生きる―タイで出家した日本人僧の物語

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

「この世界の片隅に」で受けた何かを供養するための感想

先週末に見に行った「この世界の片隅に

 

 

自分は大して映画は見ないが、自分内ベスト3に入る傑作と思った。少し時間が取れたこともあるが、今日入れて3回見に行ってしまった。。。

 

何が、そんなに自分にアピールしたのか、ちょっと考えて見た。

悲劇の中で生きる「人間」を描いている

 特に、あの戦争という、左右のイデオロギーによって、個人の生活や心情がともすれば無視されてしまいがちな題材にあって、徹底的に人間を描ききっている。これが刺さる。戦争や社会について、いろいろ思い巡らす人もいるし、そういうの無視して、登場人物に感情移入することもできる。この作品は見る人に答えではなく、「問い」を突きつけている。

登場人物は善人ばかり

 この物語は人の良い面に光を一貫して当て続けている。これは一種のファンタジーでもあり、でも現実の1側面でもある。主人公をはじめとする登場人物の、その「いい人」ぶりが心に刺さってくる。

一人の女性の成長物語でもある。

監督が下記のインタビューでも触れているように、この物語は一人の女性の成長の物語でもある。

 

上記のインタビューを通じて、3回目を見て気づいたのは、主人公のすずさんは、物語を通じて、神話の普遍的なアーキタイプ(原型)としての「英雄の旅」のプロセスをしっかり辿っていた、ということ。

英雄の旅では、大雑把にいって下記のようなプロセスを踏む。

 異界への旅立ち → 試練と変容 → 帰還と恩恵をもたらす

これをものすごく、平凡な日常の物語の中でしっかりと描ききっている。

 

神話の法則―ライターズ・ジャーニー (夢を語る技術シリーズ 5)

神話の法則―ライターズ・ジャーニー (夢を語る技術シリーズ 5)

  • 作者: Christopher Voglar,クリストファーボグラー,岡田勲,講元美香
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結論として、これは戦争を背景にした人間賛歌の物語だったってこと

つまり、

 「この世界の片隅に」 =「JoJoの奇妙な冒険」

ってことだ。

 

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素晴らしい作品をありがとうございました。

konosekai.jp

人の変化を支援するコミュニケーションとしてのクリーンランゲージ

最近ハマっているクリーンランゲージについて、現時点での考察をメモっとく。検証は不十分なので、間違っていることもあるかも。

 

クリーンランゲージ(Clean Language)とは

セラピストであるDavid Groveが使っていたコミュニケーション技法。

  • セラピストの思い込みや期待などが極力排除された「クリーンな(clean)」質問のみを使う
  • セラピーやコーチングのセッションでは、クライアントが実際に話した言葉、行ったジェスチャーをそのまま尊重し、活用する
  • 事実やクライアント本人ではなく、メタファーに着目して、コミュニケーションを続けていく。

クリーンランゲージの基本的な前提は、人はメタファーで世界を捉える、ということ。クライアントが持つメタファーの全体像を明らかにしていくことは、クライアントのものの見方を明らかにしていく、ということ。

 

参考

Less Is More: The Art of Clean Language

クリーン・ランゲージ

 

Clean Language: Revealing metaphors and opening minds

Clean Language: Revealing metaphors and opening minds

 

 

Metaphors in Mind: Transformation through Symbolic Modelling (English Edition)

Metaphors in Mind: Transformation through Symbolic Modelling (English Edition)

 

 クリーンな質問

クリーンな質問どんなものか、ということについて、創始者のDavid Grove自体は定式化できない、と述べていたそうだけど、David Groveの手法をモデリングし、体系化したペニー・トンプキンスとジェイムス・ローリィや彼らに学んだ人たちはクリーンな質問を色々と整理している。

上に紹介しているWendy Sullivan,Judy Reesの『Clean Language』では下記の12の質問がクリーンな質問としている。日本語訳はちゃんと考えたほうがいいので、参考程度に。

1.What kind of X(is that X)                Attribute   

   Xはどんな(種類の)Xですか?   属性/性質

2.is there anything else about X?       Attribute

   Xについて他に何かありますか?  属性/性質

3.Where is X? or whereabouts is X?   Location 

   Xはどこにありますか?          位置/場所

 Xはどのあたりにありますか ?

4.that’s X like What?                             Metaphor

 Xは何のようですか?         隠喩/比喩

5.is there a relationship between X and Y?  Relationship

 XとYの間に関係はありますか?       関係

6.when X, what happens to Y?                    Relationship

 Xの時、Yに何が起きますか?       関係

7.then what happens? or(and) what happens next?          Sequence

   それで、何が起きますか?              順序

 次に何が起きますか?

8.what happens just before X?                   Sequence

 Xの直前/すぐ前には何が起きますか?    順序

9.where could X come from?          Source

   Xはどこから来るのですか?         根源(Locationと言っている人もいる)

10.what would X like to have happen?   Intention

   Xは何が起きると良いですか?             意図 

11.what needs  to happen for X?        Necessary Conditions

 Xには何が起きる必要がありますか? 必要条件

12.can X happen?                              Necessary Conditions

 Xは起こりえますか?       必要条件

 クリーンランゲージを使ったセッション

クリーンランゲージを使った個人セッッションは「シンボリックモデリング」と呼ばれる。質問する方はファシリテータと呼ばれる。例えばこんな感じ。

C:最近、仕事のモチベーションが上がらなくて...

F:「仕事のモチベーションが上がらない」で、何が起これば良いですか?

C:仕事のモチベーションが上がればいい。

F:「仕事のモチベーションが上がればいい」で、その「モチベーション」はどんな種類の「モチベーション」ですか。

C:うーん。なんか、毎日朝起きて、やるぞーって思える感じ

F:「仕事のモチベーションが上がればよい」、で、その「モチベーション」は「毎日朝起きて、やるぞーって思える感じ」、で「やるぞーって思える感じ」のとき、「やるぞーって思える感じ」は何のようですか?

C:うーん。登山して、山の頂上で叫んでいる感じ。

F:その「山の頂上」はどんな種類の「山の頂上」ですか?

 こうして出てきた「山の頂上で叫んでいる」みたいなメタファーを掘り下げていくと、クライアントはかなり色々な気づきが得られる。(ここら辺は体験しないとわからないと思うが。)

 

これがクライアント中心のコーチング手法だと、例えばこんな感じになると思う。

C:最近、仕事のモチベーションが上がらなくて...

F:仕事に対して、真摯に取り組もうとする姿勢が素晴らしいですね。どんな仕事がしたいのですか?

C:もっと、世の中の為になっているって実感が得られるような仕事がしたいんです。

F:世の中の為になるなることがモチベーションになるなんて、Cさんらしいですね。もし、奇跡が起こって、世の中の為になっているって実感が得られるような仕事ができたら、Cさんには何が起きますか?

 まあ、コーチング手法には色々あるので、一概には言えないけど、クライアントを「認知」したり、クライアントが持っているリソースやゴールを探っていくってのは結構共通していると思う。コーチは人に興味を持つ。クリーンなファシリテータは、少なくとも質問はクライアント本人というよりもメタファー中心になる。

 

何で、クリーンランゲージが自分にとってこんなに衝撃的なのか、は記事を分けて書く。

如何にして我々はそれを知るのか、ということと科学と教養の話

科学の話

休日に読んだ本。量子物理学者として有名なスティーブン・ワインバーグの本。

科学の発見

科学の発見

 

 とても面白かった 。主に西洋の科学史をなぞって、現代的な科学が如何にして発見されたのかを説明する歴史書。特に、万学の祖とも言われるアリストテレスデカルトの方法に深刻な欠陥があったことを指摘している。

 

著者は多分、「歴史学者」に気を使って、現代の基準で過去の大学者(特にアリストテレス)の評価を行うことを不遜と謙遜している。でも、E.H.カーがいうように、「歴史とは、現在と過去との対話」であるなら、現代の目を持って過去を探求することは歴史家として正しい。

歴史とは何か (岩波新書)

歴史とは何か (岩波新書)

 

 

そして、多分、著者の言う科学と、その論理的な帰結として 定義される「非科学的」方法との微妙な関係は現代でも生々しい問題だと思う。

これは自分の想像だけど、多くの自称「科学者」が著者の言うような科学的方法に則っていない、という問題意識があるのではないか。

 

科学とは何か

著者は振り子の運動理論で実績を残したホイエンスの下記の文を「現代物理学の方法を言い表した、考えられる限り最上の表現である。」と評価している。

幾何学者は不変で議論の余地のない公理によって命題を証明するが、本書では、原理はそこから引き出される結論によって証明されるからである。物事の性質上、他のやり方は不可能である。

 

科学における原理は、論理的/理性的に導き出せるものではない。数学はその意味で科学ではない。アリストテレスの目的論、世界を動かす根本原則へのこだわりは科学の発展を阻害した可能性がある、と著者は示唆する。

 

原理は「結論によって証明される」から、科学では、実証的裏付けが必要。特に原理を検証するために人工的環境を作る実験が重視される。

一方で、実証と原理の微妙な関係にも注意を払うことも語っている。不要な精密さ(著者の考えでは、おそらく、ギリシャ哲学以来の知性主義の産物)や現象を完全に説明しようとすることが誤りの元になる例を挙げている。

コペルニクスには知る由もなかったが、もし彼が周転円で頭を悩ませず、観測結果との小さなズレを放置していたら、彼の理論はもっと真実に近づいていたはずである。P205

 

そして、科学では、なぜそうなっているのか、という問いは、多くの場合ひとまず脇に置いておいておくべきものだという。

素粒子の標準モデルがさらに根本的な理論から導き出せるとしても、どこまで深く掘り下げていっても、われわれは純粋な理性に基づく根本に到達することはないだろう。私と同様に、現代の大方の物理学者は、最も根本的な理論に対しても「どうしてそうなっているのだろう」という疑問を今後常に抱かざるをえないだろうという事実を甘受している。 P316

 

以上のような科学についての著者の捉え方は、自分のような文系から見ても全く違和感がない。マックス・ウェーバーやE.H.カーもほぼ同じことを言っている。社会科学の世界では、ニュートンに代表される物理学的方法との差異を強調することが多いのだけど、この本によって、本質的には変わりはないと理解した。

 

この本の意義と科学的方法

・観測データから原理を構築し、実測や実験によって検証する。

・実測には限界があることを考慮する。

上記のことは何も研究者だけでなく、普通に生活したり、仕事したりする上で非常に有効。要するに、科学的方法とは「より正しい知識を得る効果的なやり方」なのだと思う。

 

人文の意義

ワインバーグギリシャの哲学者たちは科学者ではなく「詩人」であると評した。これはとても的確な評価だと思う。

彼らは

・世界がそうなっている理由や目的を求め、それを説明する根本原理を求めた

・根本原理には精緻さ/完全さを求めた

科学の歴史が示しているのは、それを追求していても、「正しい知識」は得られない、ということかと思う。

 

でも、それらを求めてしまうのは、人間の脳にビルドインされたバイアスなのではないか、とも感じた。だから、哲学や宗教や詩が人間には必要なんだろう。そうしたバイアスがどのように人間に備わり、人間に役に立っているのかは、近年は認知心理学や進化生物学によってかなり、有望な説明がされているように思う。

 

現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い

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進化と人間行動

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 人が人生に意義を求めるのなら、科学だけでは解決できないかもしれない。役にはたつと思うけど。そこには、いわゆる科学者だけでなく、宗教家や芸術家みたいな役割が確実に必要だと思う。ここら辺の関係を理解することあたりも一般教養に含まれるといいと思う。

 

いっさいの理論は灰色であり、緑なのは黄金(こがね)なす生活の木だ。『ファウスト

 

 ただ、世の哲学者、人文学者は「より正しい知識」を持つ科学者ではなく、どちらかというと詩人や小説家と同じカテゴリに入るんだと自覚はしてほしいけどね。

 

 

 

 

 

お仕事を考える本

今読んでいる本。久しぶりにビジネス関係の本

 

良い戦略、悪い戦略

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 これは再読

 

事業の定義―戦略計画策定の出発点 (マーケティング名著翻訳シリーズ)

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はじめての事業計画のつくり方 (21世紀スキル)

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ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

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