創造指向と問題解決指向の違いについて
ロバート・フリッツがよく言っていることだが、
創造(Creation)と問題解決(Problem Solving)は全く違う。
なぜ、それが強調されなければならないのか、というと両者は表面的には似ているから。
ロバート・フリッツが定式化したシンプルな創造プロセスは下記のようなものだ
望む結果があり、現在存在している現実がある。その差異がエネルギーを生み出す。
一方で、G.M.ワインバーグの定式化した問題の定義は下記のようなものだ。
望まれている状態と現在の認識の差異
参照
- 作者: ドナルド・C・ゴース,G.M.ワインバーグ,木村泉
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 1987/10/25
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コンサルティングやシステム開発のビジネス要件定義などで行うGap分析もこれだ。
果たして両者に違いはあるのだろうか。文章だけ読んでいただけでは、その違いは明確ではない、自分もよく分からなかったし、その違いは重要ではないと思っていた。。
だが、最近これを区別することはかなり実践的なインパクトがある、と考え直すようになった。
指向(orientation)の違い
今のところの自分の理解では、創造(Creation)と問題解決(Problem Solving)の違いは、その出発点と方向。英語のOrientationの違いにあると考えている。
問題解決(Problem Solving)は現状の不満、不足、マイナスから始まる。現状の評価から出発する。現状から離れることが目的。成果はそれほど重要ではない。多くの場合、抽象的な「完璧モデル」や漠然としたイメージから「望んだ状態」を定義する。
創造(Creation)は出発点において現状を評価しない。ニュートラルにみる。創り出したい状態から現状を見てその違いを識別するだけ。その差異の認識がエネルギーを生み出し、創り出すことを後押しする。
問題解決(Problem Solving)は現状から離れることに主眼があるため、対策が効果を持ち出すとどうしても望んだ成果へ向かうエネルギーが失われていく。そのため、ある程度の対策をすると問題が解消され、次に問題が再発生するまで放置されることになる。問題発生→解決→放置→発生→解決のサイクルを繰り返す。
創造(Creation)はその成果が実現されるまでエネルギーが失われることはない。また、その成果が得られてから失われることはない。新しい創造の土台になる。
創造指向(Creative Orientation)の肝は、最初に現状を抽象的な評価基準を持ち込んで、評価することをやめることだ。ビジョンを定義し、そこからの差異としてのみ現実を評価する。
ワインバーグの問題定義は、おそらく、問題解決指向(Problem Solving Orientation)から創造指向(Creative Orientation)への変換、どこへ行きたいのか、という問いを根本的に問い直すきっかけを確かに与えてくれるだろう。ただ、ビジョンもなく、現状の分析から始めるだけでは、「望まれた状態」はでっち上げられたものになる。
創造指向(Creative Orientation)において、現実はただそこにあるだけなのだ。画家がキャンパスを前にしたら、それに絵を描いていくだけ。キャンパスの材質が悪い、とか、小さいとか、キャンパスを修理し出しても絵は完成しない。
そして、創造は常に、選択でもある。やってもいいし、やらなくてもいいことなのだ。
不満のない状態から目指すものを見つける、というのはある種のスキルだ。そこに理由は不要。カレーが好きとか、野球がしたい、とかそういう純粋な動機。多くの大人はこれを失っている。