年末年始の読書録

ちょっと、空時間に読書したら、面白くって、止まらなくなって貪るように読んでしまった。著者は山本七平。不勉強ながら、全然知らなかった。読んだのは下記。

『日本はなぜ破れるのか』

『空気の研究』

『日本人とは何か』(上)(下)

『日本人を動かす原理 日本的革命の哲学』

『静かなる細き声』

『一下級将校のみた帝国陸軍

『私の中の日本軍』(上)(下)

基本、自分は著者に惚れ込むとその人の本を片っ端から読んでしまうのだけど、ここまではまったのは久しぶり。ま、ちょっと読書に飢えていたからなー。

 

最初の方に読んだのは徹底的な旧日本軍批判で、戦前体制批判。どっちかっていうと左派に支持されている人かなって思ってたら、世間では右派の論者とされているらしく、?だった。『私の中の日本軍』を読んで理解した。有名な百人斬り論争の人だったのね。

ただ、この人を朝日として全く評価しないのであれば、単なる逆恨みだと思う。左右の党派争いで無視していい人じゃない。

 

クリスチャンで、どちらかというと非軍国青年で、旧日本軍の醜態を目の当たりにしつつも、戦後は単に軍国日本を批判する側にまわることなく、その深層を探求しようと、思想史の研究を行っている。

その意味で、「保守主義」的な思想指向を持っている人と思うので、右派と気はあったのかもしれない。自分の好きな思想家は「保守主義」者である場合が多い。

 

『空気の研究』には、発掘調査で人骨の処理をしている中、他国の人は平気なのに、日本人は病気になる、っていう記述があった。さもありなん。とくにコーチング界隈の人と接することの多い自分には納得。そういう「穢れ」を感じ取ってしまって、本当に体を悪くしてしまうのはよく目にする。

放射能問題も多分そう。僕らには、論理的な説得ではなく、「穢れ」の「お祓い」が必要なのだ。

 

山本七平の自分の評価する点は、そこから一部保守派論客にありがちな「日本人はだめだ!もっと論理的にならないと」という安直な批判に陥ることなく、「そういう問題を生ぜしめたくせや特性は何か」を日本人特殊論に陥ることなく探求している点だ。

 

日本人の道徳意識の根底にある御成敗式目、鈴木正三、石田梅岩、宗教を「薬」とする宗教観、そういったものが実に見事に分析されている。内心の問題、組織論、社会論が上手く融合している

 

自分自身を省みて、身につまされることも多いし、旧日本軍の在り方とか、ITの大規模プロジェクトでもあるなあ、と遠い目になることもある。

 

陸軍上層部は無能によりアウシュビッツに等しい虐殺と虐待を自国兵士に対して行っていた。現代には先進国同士の全面戦争はもう、起こらないけど、社員の虐待という形では、結構起こりうると思う。

 

山本氏の日本研究の根底には「理解し、分析できないものは、それを超克することはできない」って問題意識があると思う。なぜあの戦争が起こり、そして、あそこまで被害を拡大させ、今に至るまで隣国との関係も悪化させたのか、自分事として振り返らなければ、多分同じことが起きる。

 

学会での反証にさらされていない分、粗い部分はあるのかもしれないけど、個人的には丸山真男よりも面白いし、活きた意味のある論説だと思う。

 

自分はこれからの日本を考える上では、明治以降の歴史よりも、江戸やその前の時代の伝統を呼び起こし、そこから再構成することが有効と思っている。より、多元的で、自由(フリーランスの武士や学者)「百姓の治める国」が出現するなど、民主的でもあった。勿論、それらの時代が理想郷だったというよりも、それらの時代の伝統がより今の時代に合うし、出発点として妥当と思う、ってこと。